平家物語の世界へ
ようやく秋風が心地よい季節となりました。今回は「読書の秋」をテーマにしてみたいと思います。
これまで、歴史といえば「いい国作ろう鎌倉幕府」以降の出来事については、教科書で習った知識や、歴史ドラマの影響で折々の歴史小説を読んで掘り下げてみたり、なんとなく大雑把な流れは掴んでいました。
しかし、それ以前の時代、特に平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての歴史は、教科書の断片的な年号の暗記の域を脱すること無く、ほとんど未知の世界だったということに気づきました。
そんな中、古書店でふと手に取ったのが宮尾登美子さんの「宮尾本 平家物語」です。
平家一族の栄光と、源氏という新しい武士の台頭による没落という大きな歴史の流れを描き、登場人物の内面的な葛藤や人間関係に深く迫っている物語です。

宮尾登美子さんのこの作品を読みはじめて、まず引き込まれたのは、当時の衣装、食事、儀礼、習慣など細かな時代考証に基づいて描かれた宮尾さんの筆致とその細かい描写力。
当時の政治や文化、そして人々の心の動きまでも生々しく描写しており、まるでその時代にタイムスリップしたかのような感覚を覚えます。
このへんの描写は本当に見事だと思いました。
調べてみると、宮尾さんは原典である「平家物語」の様々な版本はもとより「源平盛衰記」や「愚管抄」といった同時代の歴史書、さらには「枕草子」や「源氏物語」といった平安時代の文学作品まで幅広く参照し、当時の社会背景、文化、風俗、言葉遣いなどを研究したのだそうです。
また、平家物語の舞台となった壇ノ浦や、厳島神社やなどゆかりの寺社仏閣などを実際に訪れ、当時の風景や雰囲気を肌で感じ取ろうとしたとのこと。
こうした場所を巡ることで、よりリアルな描写が可能になったのだと思います。
加えて歴史学者や考古学者、民俗学者など、様々な分野の専門家への取材による当時の生活様式や文化、制度などについて詳細な情報収集等々。
宮尾さんのこうした緻密な調査や、あくなき探究心によって裏打ちされたこの作品、読み手をぐいぐいとその場面に引き込んで行くような不思議なパワーを感じます。
吉川英治作品との比較
平家を題材とした小説で有名どころは吉川英治「新・平家物語」がメジャーどころで、僕は読んではいないものの、その存在は知っていました。
以前、彼の代表作「徳川家康 全26巻」を電子書籍で大人買いをしたのですが、途中で挫折してしまいました。
物語の展開も壮大で、家康の波乱万丈な人生が描かれ、読者を魅了する「壮大な歴史ドラマ」として大変優れた作品なのですが、根気の要る読み物でした。
出版された当時は今ほどは娯楽が多くなかった時代です。大衆文学というジャンルが隆盛を極めた昭和の中頃から高度経済成長期、家康はうってつけの題材だったのだと思います。
長く挫折状態の「徳川家康」ですが、平家物語を読み終えた頃にでも、改めて読み直してみたいと思います。
話が横にそれましたが、調べてみたところ吉川英治作品「新・平家物語」も、「徳川家康」同様、物語性や人物描写、歴史の必然性といったポイントに重きが置かれた壮大なヒューマンドラマのようです。
いつか宮尾本と読み比べてみたいと思います。(まずは家康が先ですが。。)
まとめ
「平家物語」は、あの有名な冒頭、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…」のように、単なる歴史物語ではなく、人間の栄枯盛衰、そして人生の無常観を描いた普遍的な文学作品です。
その「平家物語」を、新しい視点かつ正確な時代考証と、緻密な情景描写で書き上げたこの宮尾さんの作品。
読書はまだ半ばですが、この秋は、宮尾本「平家物語」の世界にどっぷりと浸り、歴史のロマンを満喫したいと思います。
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