前編のおさらい
前編では、65歳の節目に大人の休日倶楽部ジパングカードを作り、その翌週に控えていた第一回のパス利用期間へ、勢いよく飛び込んだお話を書きました。
我が家は大宮。宿は取らず、毎日大宮駅を起点に日帰りで往復するというスタイルで、テーマは「駅近グルメ」と「駅近温泉」。
初日は新潟で肩慣らし、2日目は青森まで往復3時間超の大遠征。それでも毎晩自宅で眠れる身軽さは、何物にも代えがたいものでした。
さて後編は、3日目のかみのやま温泉、4日目の鳴子温泉、そして最終日の平泉。この旅いちばんの「まさか!」も、この後半で起きたのでした。
【3日目】かみのやま温泉 ― 城下町の温泉で、ほっとひと息
3日目は山形へ。山形新幹線に乗って、かみのやま温泉駅を目指します。
前日から台風7号・8号のダブル台風接近という事で気が気ではなかったのですが、まず未明に8号が水戸方面を横切り 8時ちょい前に家を出る頃は雨は一時的に上がってどんより曇り空。一抹の不安を抱えながら、大宮08:32発のつばさ127号に乗りました。
山形新幹線に乗るのは、出張のとき以来約10年ぶりくらいです。
この山形新幹線は福島までは、東北新幹線に連結して走るのですが、福島を過ぎると様相が一変。車体は東北新幹線に連結された横4席のコンパクトサイズの車体。速度は130km/hまで落ち、踏切が現れ、住宅街の間をゆっくり走り始めるのです。
実は山形新幹線は「ミニ新幹線」という形式で、線路幅だけが新幹線規格で、車両は在来線サイズ。窓の外には東北の山間の風景が広がります。
かみのやま温泉駅には10:56着。改札は自動改札ではなく有人改札でした。小さな温泉街の駅らしい佇まい。
まず向かったのは上山城です。駅から歩いて10分ほどで到着。石垣の上に白壁三層の端正な天守閣が建ち、眼下には上山の街と奥羽山脈の稜線が広がります。
台風が来るとは思えない夏の青空と入道雲、さいたまより暑いくらいの陽気でした。
山が台風の雨雲を遮ってくれたのでしょう。

その後はやはり徒歩で、武家屋敷(江戸時代の武家屋敷が四件ほど残っておりそのうちの一軒が格式も高く京都の寺のような手入れがされていて 二百二十円で見学)・鶴の休石・城下町を散策。山形観光サイトのモデルコースをほぼオンスケジュールで巡りました。

昼食は町中のおそば屋さんでで山形そば。穴子丼セットを頼みました。どこか懐かしいようなホッとするお味です。

13時過ぎにはかみのやま温泉の名物「名人の湯」へ。
源泉かけ流しの湯に浸かり、拍子抜けするほどの穏やかな午後を堪能。

その後もう一か所、「下大湯共同浴場」へ。
ここは浴槽も広く、いわば昭和の銭湯でした。
とても気分よくお風呂に浸かることが出来、1日に温泉を2か所ハシゴするのが乗り鉄温泉旅の醍醐味だと気づきました。

締めは「中條饅頭」のお店でお土産を購入、アイスを食べながら一息。

まだ時間があったので在来線で山形駅へ移動。エスパル山形で山形牛みそ漬けを家族のお土産に購入。山形駅から17:07発つばさ154号に乗り込み、19:19大宮着。
台風を心配して損した、というくらい充実した晴天の一日でした。
【4日目】鳴子温泉 ― この旅、最大の「まさか!」
4日目は、やはり出張で行って以来30数年ぶりの鳴子温泉。
古川駅で陸羽東線に乗り換え、夏空田園風景の中をゆっくり走ること約46分、鳴子温泉駅に到着。

まず向かったのは「早稲田桟敷湯」。戦後間も無くのころに早稲田大学の学生が掘り当てた源泉だそうで、この名前がついているのだそうです。
天井の高い60年代風モダンな建物が印象的。ちょっと熱めの乳白色の硫黄泉にゆっくり浸かり、桟敷席で一息ついた。660円とは思えない満足感!。

その後 ランチは駅近くの食堂「たかはし亭」へ。古民家風の畳敷きの店内に、赤いちゃぶ台、扇風機、全国こけし祭りのポスター。
昭和の温泉街の食堂そのものの雰囲気の中で、温玉スパイスカレー。ターメリックライスにハート型のニンジンが添えられた見た目より本格的なお味。

食後は「鳴子ホテル」の大浴場へ。1,520円とちょい高めではあるもの。鳴子では由緒ある温泉ホテルのようで、昭和57年に当時の皇太子ご夫妻がご来訪されて写真が飾ってあった。館内はかなり広く、さすがに座敷の寝転びどころは無いがゴージャス気分を味わうには十分な日帰り温泉という感じでした。

そして本日の3連湯(?)目の「滝の湯」
鳴子温泉に来たら必ず立ち寄れという名湯。ここは大きな方の湯船が常時45℃以上らしく、とてもじゃ無いが入れません。膝下まで浸かるのが限界でした。

横にある6人ほど浸かれるぬるい方の湯船に入ると、肩が触れる距離で浸かっていた隣の方がよくここに来られるような蘊蓄話をしてきたので「どちらからですか?」と声をかけたところ、なんと僕の実家である埼玉県行田市出身の同じ小学校の先輩でした。
僕よりひとまわり先輩らしく、お歳の割には野生的でとても若々しい人でした。
東北の山奥の共同浴場で同郷の先輩に遭遇するとは、大人の休日倶楽部パス恐るべし!
同じパスを使って同じ温泉に来る同世代の温泉マニア同士、自然と引き寄せられたのかもしれません。
コアな温泉マニアたちが平然と入っているのを横目に、39度のぬるい方で十分楽しみました。
300円でこの満足感、鳴子温泉恐るべし!旅の醍醐味の、いちばん深いところを味わった気がしました。
帰りは古川から仙台に出て、家族へのお土産に牛たん弁当を3つ購入。仙台から大宮へやまびこで帰宅。

温泉3か所・絶品ランチ・同郷との奇跡の再会と、5日間の旅の中でも特に濃密な一日となりました。
【5日目】平泉 ― 歴史ロマンで、旅を締めくくる
5日間の旅の最終日。直前まで盛岡・米沢・磐梯熱海・飯坂温泉・盛岡等々。。と行き先を散々迷いながら、ともかく大宮駅発9:10のやまびこに乗り込み、一度平泉に行っておこう
ということに。これ、乗り鉄の醍醐味(笑
やまびこで一ノ関経由で東北本線に乗り換えてわずか8分、平泉駅到着。
平日にも関わらず平泉駅で30人くらいの人々が下車。ここも有人改札なので、かなりの割合の方々が大人の休日パスを駅員さんに提示していました。
快晴の青空が広がる清々しい朝、まず向かったのは毛越寺。駅から徒歩10分、浄土庭園の大泉が池が静かに広がっていました。平安時代の面影を残す池と石組み、確かに美しいのですが建物は何も残っておらず、園内の当時の様子を描いた掲示板を目に焼き付けて想像力を働かせてみましたが、僕にとっては正直なところ「池だけなのね。。。」でした。

中尊寺へは毛越寺から徒歩25分。急で長い月見坂の杉並木を息も絶え絶えに登りながら、京都の鞍馬寺に似た冷厳な山寺の雰囲気を感じました。義経が幼少期を過ごした鞍馬寺と最期を迎えた中尊寺。。なんとも歴史の重みを感じました。

ようやくたどり着いた金色堂はコンクリートの覆堂の中、さらにガラスケース越しに鎮座。思ったより小さい一辺約5.5メートルの正方形の建物に金箔・螺鈿・蒔絵が施された平安の傑作。藤原4代のミイラが今も眠っているというのに、ガラス越しの距離感が感動を少し遠ざけているような。。。
その脇道には、苔むした石畳の脇に芭蕉翁句碑が立っており「五月雨の降り残してや光堂」と、芭蕉がここに立って詠んだ句、三百余年を経て、自分が同じ場所に立っているそれだけで十分感慨深かったです。

旧覆堂は室町時代の建物がそのまま残り、こちらの方が野趣があり、この場所で平安の栄華が終わったことは紛れもない史実。
世界遺産の割に周囲は素朴で、平日は閑散としていました。
ただ帰り道、駐車場の自販機で買ったサンガリアの「ふって飲むプリン」。お土産に何本か買って帰ればよかったと後悔するほど美味しかったです。

「夏草や兵どもが夢の跡」はそのまま現代の平泉にも当てはまる気がしました。
一ノ関に戻り、やまびこで大宮へ。5日間の旅が静かに幕を閉じました。
総括 ― 大人の休日倶楽部パスは、最高の相棒でした
5日間、日帰りで新潟・青森・上山・鳴子・平泉を巡る旅。結論から言えば、大成功でした。
改めて、このスタイルの良かった点をまとめておきます。
まず、費用対効果が抜群。乗り放題パスを日帰りで使い倒したので、新幹線代だけでも通常運賃を大きく上回る「元」が取れました。宿代がかからないぶん、現地でのグルメや温泉に、気持ちよくお金を回せたのもよかったですね。
次に、体への負担が軽い。毎晩自宅の布団で眠り、翌朝しっかり疲れをリセットして出発できる。連泊で荷物を抱えて移動する旅とは、疲労の質がまるで違いました。65歳のスタートにふさわしい、無理のない旅の形だったと思います。
そして、大宮という立地の強さを、あらためて実感しました。東北・上越方面へ一本で飛び出せるこの街は、日帰り旅の拠点として、本当に恵まれています。
さて、次はどこへ行きましょうか
すっかり味をしめた僕は、もう次のパス利用期間の計画を練り始めています。次は銀山温泉と蔵王温泉あたりを軸に、また大宮からの日帰りで攻めてみようかと思案中。あの大正ロマン漂う銀山の街並みも、蔵王のスケールの大きな湯も、想像するだけでワクワクが止まりません。
65歳から始まった、僕の日帰り温泉グルメ旅。これはきっと、この先ずっと楽しめる、最高の趣味になりそうです。人生、まだまだこれから。また報告しますね。
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