秋の夜長、ラジオの季節【後編】

目次

―今もラジオを聴く理由

前回は、僕と同い年のNational T-46、小学校に入った頃のSONY SOLID STATE 11、中学生時代を思い出す三菱JEAGAMなど、古いラジオと僕の思い出について書きました。

後編は、社会人になってから購入したラジオを中心に書いてみます。

海外赴任を一緒に過ごしたSONY ICF-7600GR

これは20年前、初めて中国へ海外赴任する際、赴任先の広東省珠海へ持っていったラジオです。

ICF-7600GR デジタルシンセチューナーのマルチバンド

なにしろ初めての海外赴任です。インターネットはすでに普及していましたが、「ラジオで日本の声を聞こう」と思い立ち、赴任日の直前に都内の家電ショップで購入しました。

ICF-7600GRは短波、AM、FMを受信できる本格的なマルチバンドラジオです。アナログダイヤルを回して放送局を探す昔ながらのラジオとは違い、デジタルチューナーの本格的な海外放送受信機でした。

しかし実際に現地へ着任してみると、アパートのテレビに取り付けてもらったBSチューナーでNHKの海外向け放送を見ることができました。そのため、このラジオの出番はそれほど多くありませんでした。

それでも、日本から広大な海を隔てて中国南部の湾岸都市珠海まで、仲介するものが何もなく、日本から発信された電波がダイレクトに空を飛んで、ノイズにまみれてここまで届いている。

そんな当たり前のことが、妙に面白かった覚えがありました。

実際にこのラジオを聴く時間はそれほど多くありませんでしたが、赴任先のアパートではいつもベッドサイドに置いていました。

海外で暮らしていた時代の記憶が詰まったラジオです。

さらに小さなSONY SRF-S86

こちらはさらに割り切った、小さなラジオで、ライターと同じくらいのサイズです。

SRF-S86 シンプルなラジオ

スピーカーすらなく、イヤホン専用です。

海外赴任から東京に戻ったあと、電車通勤で使っていたAM/FMを聴くためのシンプルなポケットラジオ。

写真を見ても分かる通り、操作系も極めて単純。

周波数表示があって、親指で横のダイヤルを回して放送局を合わせる。

それだけ。

電車の中ですから、走る場所によってノイズが入ったり、音が途切れたり。

そんなところもラジオの醍醐味でした。

今の旅には小さなICF-SW20

そして今、海外へ出かけるときに持っていくのは、小さなSONY ICF-SW20。

ICF-SW20 小さいけど感度が良くて音もグッド

7600GRに比べればずっとコンパクトで、旅行の荷物に入れても邪魔になりません。

海外赴任には7600GR。

今の海外旅行にはSW20。

最近では、パリとソウルにも連れ出しました。

ホテルの部屋で聴くのはほんの少しの時間ですが、FMで現地の放送を聴いてみると、これがなかなか面白い。

パリではクラシック、シャンソン、ロックなど、音楽ジャンルに特化した番組が多彩で、おしゃべりは比較的少なめ。一方、ソウルでは明るい雰囲気のトーク番組が多かったのが印象的でした。

海外のホテルで何となく聴く現地のラジオ。

「ああ、外国に来たんだな」と実感。

その土地を流れている電波を、その場所で受け取る。

僕にとっては、それも旅の楽しみの一つです。

ダイニングテーブルには母親の形見のPanasonic

普段、一番気軽に使っているのがPanasonic RF-2450です。

RF-2450 聴きやすいラジオです

これは母親の形見です。母親もラジオ好きで3台ほど持っており、実家の遺品整理の際、長男の僕がその中で一番音の良かったラジオを受け継ぎました。

特別に高価なラジオでも、希少なコレクターズアイテムでもありません。

FMとAMが聴ける、ごく普通のラジオです。

形見というと、きれいにしまって大切に保管するものというイメージもあります。

でも、ラジオは道具です。

だったら使い続けるのが一番だと思い、ダイニングテーブルに置いています。

朝や昼、コーヒーを飲みながらスイッチを入れると、ニュースが流れてきたり、知らない音楽が流れてきたりします。

母親が使っていたラジオから、今も普通に人の声が聞こえてくる。

僕にはそのくらいの付き合い方がちょうどいいのです。

ラジオには「選ばなくていい良さ」がある

最近、改めて感じるラジオの良さがあります。

自分で選ばなくていいことです。

SpotifyやApple Musicなどのサブスクは本当に便利です。

好きなアーティストを検索すれば、聴きたい曲がすぐに出てきます。

僕も普通に使っています。

でも、どうしても自分の好きなものばかりを選ぶことが多くなるのですが、

ラジオは違う楽しみがあります。

突然流れてくる知らない曲、自分では絶対に検索しなかったような音楽。

何となく聞いていたら、

「これ、いい曲だな」

と耳が止まる。

そんなときはiPhoneをラジオにかざして、

「Hey Siri、この曲は何?」

そこで初めて曲名を知り、Apple Musicで改めて聴いてみたり。

こういう出会いがラジオにはありますね。

言葉もスッと入ってきます

それは音楽だけではありません。

ラジオから聞こえてくる人の話もそう。

新聞を読みながら。コーヒーを飲みながら。

何となく聴くと不思議と気分が落ち着きます。

番組を真剣に聞いているわけではないのですが、ときどき言葉がスッと耳に入ってきたりします。

「ああ、なるほど」

と思って新聞を読む手が止まることがあります。

自分から検索した情報でもなく、誰かに勧められた動画でもなく。

たまたまラジオから流れてきた言葉。

だからこそ、構えずに受け取れるのかも。

ラジオでは「発見」が広がります

サブスクとラジオ。

どちらが優れているという話ではないと思っています。

サブスクでは、好きな音楽をとことん楽しめます。

「好き」が深くなります。

一方、ラジオでは、自分では選ばなかった音楽や話が向こうからやって来ます。

「発見」が広がります。

この違いが面白いのです。

何でも自分で選べる時代だからこそ、ときには「選ばない時間」があってもいいと思います。

秋の夜長、ラジオの季節です

海外赴任を一緒に過ごしたICF-7600GR。

今の海外旅行に連れていくICF-SW20。

母親から引き継いだRF-2450。

そして今ではスマホに役割を奪われ、使うことがなくなった小さなSRF-S86。

どれも最新の機械ではありません。

でも、それぞれのラジオには、そのラジオと過ごした時間があります。

秋の夜長。

コーヒーを一杯淹れて、ラジオのスイッチを入れます。

今夜は何が聞こえてくるのかな。

そんな偶然を楽しむ時間も、よいものです。

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暮らしの中で見つけた楽しみや、役立つ情報を自分の言葉でお届けします。読んでくださる方の毎日に、小さな発見や前向きな気持ちが生まれたらうれしいです。

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