冬の京都巡りしてきました。

先日、名古屋方面への出張のついでに、少しだけ足を伸ばして京都に立ち寄ってきました。

 

何度目の京都になるでしょうか。

正直、数えるのはとうにやめてしまいましたが、今回ほど「よく知っているはずの場所」で新しい発見をした旅は、なかったように思います。

盆地特有の底冷え。息が白く伸びて、朝の空気がぴんと張りつめています。

オーバーツーリズムが話題になる今でも、冬の京都だけは驚くほど静かです。

この凜とした空気の中でこそ、寺社は本来の表情を見せてくれるのかもしれません。

きっかけは「京の冬の旅」という企画でした。

市内15の名刹で、普段は非公開の文化財を3月18日まで特別に公開するというもの。

 

今回は東寺・東本願寺・建仁寺の三つを巡ってきました。

「京なび」— 何度目かの京都で、初めて知った場所

https://ja.kyoto.travel

朝8時半、ホテルをチェックアウトして京都駅へ向かいました。

ビジネスバッグをコインロッカーに預け、駅ビル内の「京都総合観光案内所(京なび)」へ。

ここで、あらかじめJR東海ツアーズに申し込んでおいた拝観引換券とガイドブックを受け取ります。

お恥ずかしい話ですが、この施設の存在を知ったのは今回が初めてでした。

何年も京都に通ってきたつもりでいても、まだ知らない場所があるものですね。

そう思うと、少し嬉しくなりました。次回からは、京都巡りの最初にここへ立ち寄るのが定番になりそうです。

 

東寺 — 三度目にして、初めて中に入った五重塔

 

京なびから徒歩15分ほどで、東寺に着きます。

新幹線の車窓から最初に目に飛び込んでくる、あの五重塔が印象的なお寺です。

東寺を訪れるのはこれで三度目でしたが、これまではいつも外から眺めて、写真を撮って帰るだけでした。

今回の特別公開では、五重塔の初層内部に初めて足を踏み入れることができました。

石段を上がり、中に入った瞬間、空気が変わるのを感じます。

普段は非公開だけあって、どこか霊験な静けさが漂っていました。

江戸初期(1644年、徳川家光の寄進により再建)から積み重なった風化の色合いをまとった極彩色の文様。

大日如来に見立てた心柱を、金剛界四仏がぐるりと囲んでいます。

床下を覗くと、礎石の上に心柱が乗っているのが見えます。

ただ、わずかに浮いているのだそうです。腐食対策とも耐震対策とも言われますが、

そもそも心柱とは、太い丸太を地面に立ててご神体として崇めるという古来の信仰が仏教に取り込まれたものなのだとか。

つまりこの柱そのものが、仏を表しているということになります。

そういえば、1568年に入洛した織田信長がこの東寺に陣を構えた際、境内での乱暴狼藉や放火を禁じる文書を出したという逸話が残っています。信長は、この五重塔(正確には先代のものですが)を眺めながら、どんな思いを抱いていたのでしょうか。

そんな想像を巡らせながら、観光客もまばらな朝の境内を、ゆっくりと歩きました。

 

東本願寺 — スケールの向こうにある、静かな部屋

 

東寺から市バスに乗り、東本願寺へ向かいます。

京都駅の東西にある東本願寺と西本願寺は、もとは一つのお寺でした。

親鸞の門弟たちが遺骨を祀るために創建し、戦国期には石山本願寺として織田信長と争うほどの力を持ちます。

その勢力を警戒した豊臣秀吉と徳川家康の手によって、東西に分けられることになったそうです。

そうした背景を知って歩くと、この大きな伽藍の見え方が少し変わってきます。

今回は普段非公開の「宮御殿」と「桜華亭」が特別公開されていました。

宮御殿は、江戸末期の大宮御所の一部を明治に移設したもの。

宮御殿の襖絵

女官の間だったことを示す赤い畳の縁が印象的で、室内は宮中の年中行事を描いた大和絵で彩られています。

南側には築山と池を配した庭園が広がり、静けさの中にも華やぎが感じられました。

 

けれど今回いちばん心に残ったのは、桜華亭です。

明治42年に建てられた東京の別邸の一部を、昭和14年に移築したもの。

円山応挙の襖絵が飾られたこの和室が公開されるのは、実に40年ぶりだそうです。

 

直射日光が当たらなかったおかげか保存状態は驚くほど良く、当時のままの空気が残っているように感じられました。

40年もの間、誰の目にも触れずに時を止めていた部屋に立ち会えたことは、今回の旅でいちばんの収穫だったように思います。

 

建仁寺 — 古さの中に、新しい京都を見つけて

 

最後に訪れたのは、京都最古の禅寺、建仁寺です。

北門を入ってすぐの西来院は、長らく非公開でしたが、意外にも現代アーティストの作品を多数迎え入れている、

京都のお寺としてはかなり先進的な場所でした。

 

本堂に入ってまず目を引かれたのは、天井に描かれた2匹の龍です。

中国人アーティスト・陳漫による「白龍図」で、横約13メートル、縦約6メートルという圧倒的なスケールでした。

お庭も最近作り替えられたばかりだそうです。

昭和の名匠・中根金作の流れを汲む中根庭園研究所による作庭で、本堂前庭園には中国仏教協会が峨眉山から運んだという巨石が3つ据えられていました。

中庭には竹の風情の中、蘭の花を浮かべた石器が置かれています。

古さと新しさが自然に共存している。何度も京都を訪れてきたつもりでいても、こんな表情を見せてくれるお寺があったのかと、新鮮な気持ちになりました。

冬の京都は、何度目でも発見があります

東寺・東本願寺・建仁寺。それぞれ異なる歴史を背負いながら、この冬だけ見せてくれる表情がありました。

何度訪れても、まだ知らない京都がある。

底冷えの朝の空気の中を歩きながら、そのことを改めて実感した旅になりました。

もし冬の京都を訪れる機会があれば、ぜひ静かな朝の時間を狙ってみてください。

きっと、いつもとは違う表情に出会えるはずです。

 

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