はじめに
秋も深まって、夜がだんだん長くなってきました。この季節になると、なぜかラジオが聴きたくなります。
スマホで音楽もニュースも何でも聴ける時代に、わざわざラジオ。でも、これがいいんですよね。
気がつけば、わが家にはラジオが7台集まっていました。
今回はその7台を、僕の人生の時系列に沿って前編・後編に分けてご紹介します。前編は、子供の頃から中学の頃までの3台です。
ちなみにこの3台は、当時から手元にあったものではありません。数年前に、フリマアプリで購入したものです。
1台目:ナショナル T46 ― 私と同い年のラジオ
まずは、ナショナルのT46です。実は、僕と同い年。1961年生まれのラジオです。

ファインエイトというニックネームで販売された、8石トランジスターの中波、短波の2バンド。
価格は11,200円で、当時の大学卒の初月給に匹敵する高額商品だったそうです。8のエンブレムとの下にはダイヤモンド粒のような透明プラスチックが3つはめ込まれています。
シルバーと金色の落ち着いたボディに、横長のダイヤル。なんとなくホッとするデザインです。昭和30年代の日活青春映画に出てきそうな、ちょっとゴージャスな雰囲気。ボディの金色が上品で、今のラジオにはない風格があります。
このデザイン、いわゆるミッドセンチュリー風といって、1950年代から60年代に流行した、アメリカ様式のデザインの流れを汲んでいると思われます。当時のアメ車といえば、バンパーとかフェンダーミラーとか銀色に輝くメッキの飾りが目を引きましたよね。
あの「豊かさを見せたい」「ちょっと豪華に見せたい」という空気が、日本の家電にも流れ込んできたわけです。
シルバーに金色を差す配色は、まさにその名残だと感じます。ラジオ一台にも、アメリカへの憧れと、豊かになっていく日本の勢いが、ぎゅっと詰まっているんですね。
それと、このラジオにはFMがありません。調べてみると日本のFM放送が本格的に始まるのは、まだずっと先、1969年なのだそうです。T46が作られた頃のFMは、東京と大阪だけの実験放送だったのです。
発売されて65年経った今でも、感度も良くいい音で鳴るんですよ。ちょうど今もリビングで、ニッポン放送のカープ VSタイガース戦を聴きながらこれを書いています。
2台目:ソニー ソリッドステート11 ― 小学校入学の年
続いては、ソニーのソリッドステート11。昭和43年(1968年)製、僕が小学校に入学した年のラジオです。

このシリーズは1965年に登場し、これは3代目にあたります。
「ソリッドステート」は、真空管ではなく半導体を使っているという意味で、「11」はトランジスタ11石から来ています。
ところが、この3代目は性能アップで実は12石になっているのに、名前は「11」のまま。それだけ、名前が定着していたんでしょうね。
シルバーのヘアライン仕上げに黒を合わせた、クールでスクエアなデザインも魅力です。T46のミッドセンチュリー風とは打って変わって、機能美の世界。同じ昭和のラジオでも、7年でこんなに変わるのかと驚きます。
調べてみると、この年は日本のラジオにとって節目の年だったようです。FM放送の周波数が正式に決まり、翌年の本放送開始に向けて、FMが全国に広がろうとしていた時期なんだそうです。T46にはなかったFMが、このラジオには付いています。中波、短波、FMの3バンド。FMのなかったラジオが、FMも短波も聴ける時代へ。そんな時代に、ソニーが送り出していたロングセラーなんですね。
ランドセルを背負って、毎日が初めてのことだらけだったあの頃。今思うと、ラジオも僕も、新しい時代の入口に立っていたのかもしれません。
3台目:三菱 ジーガム(JEAGAM) ― マイナーだけど、感度は抜群
3台目は、三菱電機のジーガム(FIC-404)です。

70年代の中学生の自宅の必須アイテムといえば、何はなくともラジカセ(もちろんモノラル)でした。
主流はソニーSTUDIOシリーズ、ナショナルMACシリーズ、東芝ACTAS。私の受験勉強のお供も、ナショナルのラジカセでした。
当時は、海外の放送局の日本語放送を聴く「BCL」が大ブーム。ラジオ好きの男子は、ラジカセとは別に単品のラジオを持つのが定番で、そちらはソニーのスカイセンサー、ナショナルのクーガが主流でした。
*以前のブログにも書いたように数年前、僕もスカイセンサー5800を手に入れたのですが、さほど深い思い入れがなかったため知人に譲ってしまいました。
そんな中で、三菱電機のラジオは、かなりマイナーな存在でした。
それでも心に残っていたのは、当時よく聴いていた短波放送「ハロー・ジーガム」の印象が強烈だったからです。パーソナリティは、スネ夫役の声でも知られる肝付兼太さん。ラジオから聞こえてくるあの漫画チックな声に、何度勉強の手を止め、心が安らいだことか。受験勉強のプレッシャーから、ほんのわずかに解放される時間。その感覚は、今でも心に染み込んでいます。
ちなみに「ジーガム(JEAGAM)」とは、「ジーンズ世代のオーディオマニア(JEans AGe Audio Mania」の頭文字を取った名前だと言われています。
あの番組の印象があまりに強くて、数年前、ついにフリマアプリで見つけました。型番はFIC-404。「ハロー・ジーガム」が放送されていた頃のモデルで、短波に強いダブルスーパー方式、しかもワイヤレスマイクまで内蔵されています。ワイヤレスで自分の声を隣の部屋に飛ばすというお遊び的な要素だったのかな?この辺はちょっと不明ですが。。。
グレーの本体に、黒いスピーカーグリル。つまみがいくつも並んだ、いかにも当時の少年心をくすぐるラジオらしい顔つきです。
50年近く経った今でも、ソリッドステート11に勝るとも劣らない抜群の感度だということ。三菱電機の技術の底力を、半世紀近く経って、あらためて思い知らされました。
前編のおわりに
こうして3台を並べてみると、どれも、その時代の自分の姿とセットで思い出せるラジオです。当時そばにあったわけではなく、大人になってから探して手に入れたものばかり。それでも手に取ると、あの頃の空気がふっとよみがえってくるから不思議です。
スマホの中の音楽には、なかなかこういう「手触りのある思い出」は残らないかもしれません。
後編は、一転して、当時を一緒に過ごした相棒たちです。初めての海外赴任(中国)に連れて行ったラジオ、東京に戻ってからの通勤電車のお供、そして今、ダイニングテーブルで毎日聴いているラジオまで。ラジオの良さについても、あらためて語ってみたいと思います。

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