パワエニ

Mac、旅行、日々の出来事など徒然に綴るBlogです。

ザウルスとISDN公衆電話

モバイルの先駆け

90年代前半、電子手帳という商品カテゴリーがありました。
用途は電話帳、カレンダー、To doを50音キーパッドで入力。
早い話が、紙の手帳でできることをわざわざアナログ作業を介してデジタルに置き換えるというある意味矛盾したガジェット。
カシオとシャープがしのぎを削っていました。

数年後、二大メーカーの勝負は、シャープ がザウルス という手書きができるデバイスの発売で決着が付きました。

ザウルスは何世代か進化を続け、それまでの手帳機能に加え、辞書やゲームなどのアプリケーションを搭載し、ハード的にはICカードスロットや赤外線ポートを装備。ついには、うまか棒みたいな外付けFAXモデムをザウルスドッキングすることによってデジタル通信できる「PI-6000FX」を発売するに至っては、もう普通のお客さんは付いてこれませんよという世界を作り上げてしまいました。

これにより、PI-6000FXは当時の電子手帳の枠を超え、モバイルコンピューティングの先駆けとなる存在となりました。

しかし、それを使いこなすにはハードルが高かった。

PI-6000FXはその先進性ゆえに、操作が複雑でフルに使いこなすのが難しいという側面もありました。当時の会社の通信教育プログラムに「ザウルスを仕事で使いこなそう講座」などとというのもあったくらいです。

ご多分に漏れず僕も、買ったはいいけど一時宝の持ち腐れ寸前の状態。
先輩ザウルスユーザーの方に、「やはり紙の手帳に戻ります。通信は家のMacでできるし。。」と弱音を吐くと、その方から「せっかくお金を出したのだから、使わなければだめですよ。」と言われ、気を取り直して、取説の再読など試行錯誤。
ようやくポテンシャルを引き出すような使い方ができるまでになりました。

モバイルの夜明け

ザウルスならではの体験として印象に残っているのは、ISDN公衆電話を使ったデジタル通信です。
当時はまだ携帯電話が一般的なものではなく、モバイルコンピューティング
という言葉はあっても、コンピューター雑誌で紹介される程度の物事。

当時、都内のターミナル駅に設置が始まったデジタル通信ができるISDN公衆電話。
これにモジュラーケーブルを差し込み、ザウルスの外付けモデムを介して、ニフティサーブにログイン。
緊急でもないプライベートなメール受信して悦に入っていました(苦笑

流石に当時そんなことをやっている人種(モバイラーと呼ぶ)は極めて稀というかほぼ皆無。
駅構内を行き交う人々から「何してるんだこの人は!?」という不審者を見るような眼差しを向けられたことは1度や2度ではありませんでした。
このときは未来の国からやってきたスーパージェッターの気分を味わいましたね。(笑

困難を乗り越えた先にあるものを教えてくれたザウルス


この経験は、新しいガジェットに挑戦する際に、諦めずに使い続けることの大切さを教えてくれました。
使いこなすのは難しいかもしれませんが、その先に素晴らしい世界が広がっています。

ニフティサーブを通じて全国のモバイラーと知り合うことが出来、友情が芽生えました。
アキバ・ジャンクMacめぐりに同行していただいた長野のカメラマン。
広島焼きを送ってきてくれた広島の同学年のサラリーマン。
文字だけのやり取りでの中古Macの売り買い。土台に信頼関係があって成り立つ取引です。
当時のデジタルの世界はジェントルマンで成り立っていました。

後にPowerBookを持ち運びに便利な軽量機種に買い替え、本格的にモバイルワークを始めました。
PowerBookDuo280cです。こいつの話はまたこの次回にでも。