パワエニ

古いMac、旅行、日々の出来事など徒然に綴るBlogです。

ジョブズ SONYへの憧れ

Appleのお手本だったSONY

 2001年、幕張で開かれたマック・ワールドエキスポ・トーキョー開催初日。

4年前に復帰するやいなやトランスルーセント・デザインのiMacの大ヒット。倒産寸前と言われたAppleの経営危機を救ったCEO・ステーブ・ジョブズが基調講演に登壇。

 

この基調講演で、彼が最も力を入れてアピールした新製品。それがPowerBook G4でした。

 

AppleSONYをリスペクトしてる。彼らはとても素晴らしい。

PowerBook G4は、VAIOのようなセクシーなノートブックを作ろうとの想いを込めた!」

 

彼の背後の巨大なスクリーンに、性能スペック、製品サイズ、バッテリー持続時間、価格等々。。VAIOとの比較表のスライドを映し出し、熱く語っていたのを今でも鮮明に覚えています。

 

ちなみに、この時のジョブズは大きな世界観を語ることもなく、自社製品を上手にプレゼンする辣腕営業マンという印象でした。

 

この講演を聞いて僕の率直な感想は「パーソナルコンピューターの先駆者Appleが目指すところは、この世界の新参者のSONYなのか!」とちょっと意外な感じがしたものの、洗練さたデザイン、当時としては劇的な薄さと可搬性。

確かにVAIOの先進性は、PC業界の衝撃だったのです。

 

そして、現在のApple製品の圧倒的な独創性や革新性も、かつてはSONYというお手本があったのです。

 

後にいろいろ調べてみるとジョブズは生前、SONY創業者 故・盛田昭夫氏と親交があり、その企業文化や製品哲学に深く共感していたようです。

一説によると、ジョブズMacOSが動くVAIOSONYに披露したという逸話も。。

 

思うに、ジョブズは愚直なまでにSONY製品をリスペクトし、いつかはそれを追い抜こうとの熱い想いを込めて製品を世に送り出していたんですね。。

僕はその集大成がPowerBook G4とiPodだったと思います。

 

特にiPodは、更にSONYの先を行き、音楽配信ビジネスを定義。

遂にはiPhoneに繋がる道筋を作ったエポックメイキングなプロダクトといえるでしょう。

 

VAIOがライバルだったPowerBook G4 TI

当時VAIOノートが外装の素材に採用したマグネシウム金属。

軽い、高強度というポジテイブな要素がある反面で、表面の加飾加工性に難点があり、自動車やノートパソコンでは、外観パネルに用いられることはなく内装部品用途の素材でした。

 

そのマグネシウムを外装に用いることはチャレンジングを通り越して、常識外れと言わざるを得ませんでした。

VAIOノートの大ヒットに続けとばかりに、マグネシウムを採用したノートPCが東芝富士通などからも出ました。

 

それらは銀色のカラーリングが多かったため「銀パソブーム」というムーブメントとなったものの、供給できる台数が圧倒的に少なく、当時のパソコン雑誌には「銀パソ新製品は発売日に店頭に並ばない!」などと揶揄されたほどです。

各社マグネシウム部品の極端に低い製造歩留まりが読めず、満足な部品調達が出来なかったのです。購買部門泣かせの素材でした。

 

これに対し、PowerBook G4ではマグネシウムではなく、チタン合金を採用しVAIOに対抗したのです。

加工難易度的にはマグネシウム同様に難しい素材でした。

今でこそiPhone15Proの外装の素材として普通に採用されていますが、当時はプレス加工や表面処理が非常に難しく、エレクトロニクス製品に採用されている事例はなかったと思います。

 

このへんは明らかにVAIOへのオマージュとは裏腹の、Appleとして独自の新しい素材を採用してVAIOを打ち落とし、ノートブックのプレゼンスを高めようという熱くたぎった想いがあったのものと思われます。

 

後に僕もPowerBook G4を手に入れましたが、チタン独特のクールな質感と、何の不足もない高性能。

当時会社から支給されて仕事で使っていたVAIOに比較して、なんとなく到達した次元の違いを感じたものです。

 

iPod



SONYは20年の長きにわたりウオークマンで、カセットテープから、MD、更にはメモリーオーディオと、ポータブルオーディ業界を席巻してきました。。

 

その圧倒的なプレゼンスと、ハードの優位性がありながらも、傘下のレコード事業への配慮から、インターネット時代の音楽配信ビジネスのまとめ役を担おうとしませんでした。

結果、前回のNokia携帯のごとく、iPod更には音楽配信ビジネスiTunesを立ち上げたAppleにオセロゲームの如く、大逆転を食らってあっさりゲームチェンジとなってしまったのです。

 

奇しくもその頃、SONY社長の出井伸之氏が「インターネットはユカタン半島に落ちた隕石だ!」と、インターネット時代の未来を予言しながらも、隕石の激突で絶滅してしまったしまった恐竜は、こともあろうにSONYのレガシービジネスそのものだったとは何とも皮肉です。

 

Think diffarent

当時ジョブズが掲げた広告スローガンです。

その意味するところは以下のようなものだそうです。

 

  ・現状に挑戦し、新しい価値観を創造する

  ・型にはまらず、独創的な発想をする

  ・人と違うことを恐れず、自分の信念を貫く

 

まさにこれらはSONYの企業文化そのものだったはずなのですが。。。